Ridilover(リディラバ)社会課題をみんなのものに

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NTT西日本の社員が社会課題に『越境』する理由 ―「論理だけでは通用しない世界がある」

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NTT西日本の社員が社会課題に『越境』する理由 ―「論理だけでは通用しない世界がある」

「研修なのに、涙を流しながら自分の決意を語る参加者がいたんです」

他社交流型の越境プログラムを積極的に取り入れているNTT西日本。
フィールドアカデミーを2年間にわたって継続導入いただいています。

最初は「そこまで期待していなかった」フィールドアカデミーの導入理由は?そして、実際に派遣してみて衝撃を受けた「現場の凄味」とは?

人材育成担当としてリディラバと協働してきた大島誠志さんに、リディラバ・夏目がお聞きしました。

左:リディラバ・夏目、右:NTT西日本・大島さん


「正直、そこまで期待していませんでした」―それでもプログラム導入を決めた理由

夏目:NTT西日本さんは、2020年のフィールドアカデミーから初参画いただきました。

僕たちがフィールドアカデミー事業を立ち上げたのは2019年で、当時はまだ企業向け事業としての実績は浅く、導入事例もそこまで多くなかったかと思います。

それでも導入を決断いただいた理由は、ズバリ何でしょうか?

大島:決め手は、夏目さんですね。

夏目さんの第一印象は「Tシャツ姿の元気な人」。
でも、もちろんただ元気というだけではなくて、プログラムの内容、リディラバの目的など、私たちの疑問1つ1つに、自分の言葉で丁寧に応えてくれて。

リディラバが一貫して社会課題に特化した取り組みを続けていることや活動内容は知っていましたし、面白そうだなと思っていましたが、夏目さんとじっくり対話できたので、プログラムのことも、リディラバのことも、より理解できるようになりました。

夏目さんって、本当にリディラバのチャレンジを堂々と語るんですよね。
正直、最初からプログラムそのものにめちゃくちゃ期待していたわけではなかったのですが、「こういう人たちが運営しているプログラムなら、まずはやってみても良いかな」という気持ちになったんです。

社会課題の現場で「困惑」する社員たち

夏目:最初からプログラムそのものに大きく期待されていたわけではなかった―それでもNTT西日本さんには、導入初年度から継続的に社員を送っていただいています。

実際に社員を派遣されたことで、プログラムに対する印象の変化があったということでしょうか?

大島さん:実際にプログラムの様子を拝見して、「強い想い」を持った現場との協働こそフィールドアカデミーの魅力だな、と感じるようになりましたね。

NTT西日本に限らず、最近は多くの大企業が、「社外で現業とは異なる経験を積む」という越境型の研修プログラムを導入し始めています。
「実際の社会課題に触れて、解決策の提言をしましょう」というタイプの研修も世の中にたくさんありますし、言ってしまえばフィールドアカデミーもそのうちの1つ、くらいに思っていました。

そんな印象を持っていた私でも衝撃を受けたことが、フィールドアカデミーの現場パートナー(日本フードエコロジーセンター・髙橋巧一さん)が持っている「想いの強さ」なんです。

日本フードエコロジーセンター・髙橋巧一さん

日本フードエコロジーセンターの代表・髙橋巧一さんは、「食品ロス」という社会課題解決に取り組んでいる。
 食品ロスというと、家庭での食べ残しや小売店の売れ残りがイメージされやすい。しかし、問題の構造を紐解くと、生産・加工などサプライチェーンのあらゆる場面で大量のロスが発生していることがわかる。
 髙橋さんは、お店や工場でどうしても発生してしまう余った食品を回収・再加工して、ブランド豚のエサとして再生し、もう一度食品市場に戻すという事業をしている。

フィールドアカデミーでは、再生工場の現場を体感し、髙橋さんとくりかえし対話しながら、数カ月にわたって社会課題解決に挑んだ。

大島:参加者は最初、「食品ロス問題を解決するぞ!」という気持ちで参加するわけですよね。そして、多くの人たちは社会課題に対して「状況を論理的に整理しさえすれば、解決策が見つかるだろう」と思いがちです。

そのため参加者も、「論理的に考えれば、別のアプローチの方がより効果的ではないですか?」「こうすればもっと効率的に課題解決できませんか?」という仮説を髙橋さんに投げかけていました。

しかし髙橋さんは、論理だけをいくら懇々と説明されても首を縦に振る人ではない・・・ということが、プログラムが進むにつれて徐々にわかってくるわけです。

すると、参加者は困惑しますよね。
「自分たちが言ってることは間違っていないはずなのに、なぜ髙橋さんを振り向かせることができないのだろう?」と。

僕が思うに、自分が社会に何を成し遂げたいのかという「想い」が、髙橋さんの活動の原動力になっている。
そのため、どれほど論理的に整合性があっても「想い」の入っていない提言では、髙橋さんの心を動かすことはできなかった。

参加者ではなく、後ろでオブザーブする立場だった私にも伝わるくらい、髙橋さんは社会に対して強烈な想いをお持ちですからね。

夏目:仰る通りですね。僕たちも、現場の方々の想いにはいつも刺激を受けています。

現代の社会課題というのは、ステークホルダー同士の利害が複雑に絡み合っていて、解決の難易度が極めて高い。だからこそ、今に至るまで解決されずに残っているわけです。

「こうすれば解決できるはず!」といくら頭の中で仮説を組み立てても、現実ではその通りにいかないことも多いし、成果を出すためには途方もない時間がかかります。

だからこそ、ブレずに課題解決に取り組み続けるためには、髙橋さんのような「想い」が重要ということですね。

大島さん:そうなんですよ!

そしてブレない軸を持っている髙橋さんのような人と粘り強く対話を重ねることで、夏目さんが仰るような「想いを持って課題解決に挑むことの意味」について、誰から教わるわけでもなく、自分自身に問いかけるきっかけになっていたんですよね。

改めて振り返ってみると、よくできたプログラムだなあと思います(笑)

日本フードエコロジーセンターの現場に触れる参加者たち

研修の最後に、参加者から「涙」がこぼれ落ちたわけ

夏目:参加者は髙橋さんと何度も対話しながら中間発表に臨みましたが、そこで出た提言は全て却下されてしまって・・・発表後はみんな途方に暮れていました。

それから最終セッションまでの1か月、どのチームも本当に悪戦苦闘していました。当初の様子を知っている大島さんからすると、最終セッションでの参加者の姿を見て、どのような印象の変化がありましたか?

大島:最初はただ論理的にファクトを積み重ねて「どうすれば課題解決できるか?(CAN)」あるいは「何をしなければならないか?(MUST)」ばかりを考えていた当社の参加者たちも、次第に「そもそも、自分が何をしたいのか?(WILL)」を問うようになっていったと思います。

そのため最終発表では、「自分は本当に何がしたいのか」「社会に何を成し遂げたいのか」について、1人ひとりが明確な軸を持って、髙橋さんに提言を訴えかけていました。

夏目:フィールドアカデミーは異業種混成の数名チームで課題解決に挑む立て付けにしています。

なので、「自分の想いを、バックボーンの異なるメンバーにどうやって訴えかけ、合意をすり合わせていくか」という山も乗り越える必要がありましたね。

チーム内で対話を重ねる参加者たち

大島さん:様々な困難をチームで乗り越えていって、ある種の同志のような気持ちになっていたのかもしれません。

最終発表が終わった後の振り返りセッションでは、何人かは涙を流しながら、今後の決意を他の参加者に訴えかけていました。

研修で涙を流す社員がいるなんて、なかなか信じがたいですよね。

夏目:その場面、鮮明に覚えています。ただ感極まっただけではない気がしますね。

振り返りセッションの最後は、参加者1人ひとりが前に立って、「会社を通じて何を成し遂げたいか」について宣誓してもらいました。

会社の垣根を超えて、数カ月にわたって答えのない世界でもがき苦しんだ仲間と「明日からみんなそれぞれの持ち場に戻るけど、今日のこの気持ちを忘れないようにしよう」と互いに誓い合う、ある種の決意表明ですよね。

悲しいとか寂しいとかではなく、決意が発露されたが故の涙だったように思います。

熱量無くして物事を成すことはできない

夏目:フィールドアカデミーが生み出す「強い想い」に、大島さんが共鳴されていることがよくわかりました。とはいえ、フィールドアカデミーはあくまで研修なので、会社に何かを持ち帰ることが大切なはずです。

ということは、社員の「想い」を育むことが企業の人事戦略としても重要なのでしょうか?

大島:仰る通りです。
カッコよく一言で言うとするならば、「熱量無くして物事を成すことはできない」ということですね。

正直、大企業に長いこと所属していると、「自分が何をしたいのか?」よりも「社会から何が求められているのか?」ばかり考えるようになりがちです。

しかし今の時代は、万人に受け入れられるような汎用性の高いソリューションなんて、既に出尽くしているじゃないですか。
そうだとすると、「社会から求められていること」を突き詰めるために100人に意見を聴いたところで、100人全員から賛同を得られることはまずありえません。

そのような状況でも物事を前に進めるために、最後の一押しとしての「想いの強さ」、言い換えると「熱量」が必要なのだと思っています。

大島:自分の想いを起点に徹底的に提案を練り上げ、反対意見に直面してもなお熱量で訴えかけることができるかどうか。もはや、今後の企業人に必要な「能力」と言っても良いでしょう。

ただ熱ければ良い、というわけではもちろんないです。
熱量はその人の原動力になって、知識や提案内容もどんどん精緻になるので、提案に説得力が生まれていく。そのプロセスが重要なんです。

反対に、自分の想いが乗っていない「べき論」で提案をしてしまうと、知識がないので質問にうまく返せず言葉が詰まってしまう・・・なんてこともありますよね。

仕事をしていると、何かを決め、行動しなければならない、という場面が多々あります。そんな時、誰かに答えを委ねようとしても、物事を前に進めることはできない。

軸にすべきは、他でもない「自分自身」ですよね。

西日本電信電話株式会社 総務人事部 主査
大島 誠志

1986年、愛知県生まれ。大学までは愛知県に住み、2009年にNTT西日本に入社。入社以降は大阪を中心に働き、仕事は主にNTT西日本が持つ設備の構築や保守等の仕事に携わる。2019年より社員育成に関する仕事に従事し、2020年に「フィールドアカデミー」より社員の派遣を始める。

株式会社Ridilover(リディラバ) 企業研修チーム リーダー
夏目 翔太

1991年、東京都生まれ。生まれも育ちも荒川区町屋。立教大学卒業後、通信メーカーの新規事業創出に4年間従事した後、2019年に株式会社Ridilover入社。企業向け人材育成事業「フィールドアカデミー」の事業統括を務め、現在までに累計40社以上の大企業のリーダー育成に関わる。

(肩書等は、対談当時のものです)

本対談は、動画でもご覧いただけます。

社会課題は、仕事の「意味」を変える
フィールドアカデミー