Ridilover(リディラバ)社会課題をみんなのものに

Column & Reportコラム・事例

【導入校インタビュー】情報の授業でなぜ社会課題を扱うのか!?教科学習で養う”生きる力”<後編>

#導入校の声

【導入校インタビュー】情報の授業でなぜ社会課題を扱うのか!?教科学習で養う”生きる力”<後編>

今回は、情報の授業で探究要素を入れ込んだ授業を展開するH先生へのインタビュー後編です。

▼前編「情報の授業で社会課題の探究?新たな取り組みを進める先生に学ぶ!」はこちら

後編では、
・そもそもどんな狙いで情報の授業に課題解決の要素を入れているのか?
・実際にやってみてどうだったか?

などをお話いただきました。

こんな先生にオススメ
✅自分の担当教科で将来生徒の役に立つ学びを提供したい先生
✅知識やスキルを教えることに止まらず具体的な活用シーンもセットで教えたいと考える先生

H先生のプロフィール
・私立男子校の先生
・数学科担当を経て、今年度から情報科担当
・教員歴約20年



共通テストのためではなく、”生きる力”を育みたい

ーー情報は、2025年の共通テストから国立大学の出題教科に新たに加わります。その対策という点では授業をどのようにしたいと考えていらっしゃいますか?

私が現在行っている授業の内容は、正直共通テスト対策とはかけ離れているように見えるかもしれませんし、対策しようという意識もあまりありません。生徒には、共通テストのための力ではなく、さらに普遍的な”生きる力”をつけてもらいたいと考えています。そして、こうしたことを経験することで共通テストもできるようになると信じています。

現代はAIが発達しています。だから、AIを駆使することは重要です。しかし、そもそもAIとはデータを集めて学習させていて、AIにどのようなことを学習させたらいいかを考えるのは人がやることだと思っています。
そのため、データを集めて学習させるという部分ができる人材を育てたいです。AIを利用するにとどまらず、AIをつくる側の視点を持ってほしいですね。

やってみて感じた、問い設定の難しさと意義付けの大切さ

ーー生徒たちにかなり高いレベルを求めているのが伝わってきます。
実際に情報にリディラバのスタディツアーを取り入れてみていかがでしたか?

生徒たちは、想像以上に問いを発見するのが苦手だという気づきがありましたね。
教員20年目ですが、”言われたことはできるけど…”という生徒が増えている感じがします。なんでも丁寧に教えてもらい、環境を整えてもらって育っている。彼らが悪いのではなく、そうしたことが当たり前になりつつある社会の仕組みが要因だと思います。
”合っているか合っていないかわからないけど、自分でやり切ってみる”という能力が足りないなと感じます。

ーー裏返すと、先生方の腕の見せ所とも言えるかもしれませんね。

とは言え、ノンフォーマットで進めるのはかなり難易度も高いので、今回、事前学習・スタディツアー・事後学習をある程度順序立てて授業を設計しました。それでも準備としては不十分で、いろいろなことが直前になり、この後やることのイメージが掴みづらかった生徒もいたかもしれません。

「次のステップではこんなことをするよ」と見せておくことで、生徒たちの手の動かし方が全く変わってきます。
例えば、「事後学習ではこのシートを埋めてもらうよ」と予め伝えると、生徒は自然とそれをイメージしながらスタディツアーで学んでいくことができ、結果的に深い思考につながっていきます。

(イメージ)次のステップを見せておくことが重要

「何をやるか」を伝え、「何を考えるか」は自由に。デザインし過ぎない授業

しかし一方で、教員が生徒を誘導し過ぎるのはよくないと思っています。
社会課題をテーマに据えた本授業は、答えのないことを考える授業です。だからこそ、自由な発想で考えてほしいのです。極端なことを言うと「今まで言われてきたことって本当?」と疑ってほしいです。

例えば、食品ロス問題に関して「家庭や給食で食べ残しするのやめましょう」とよく言われますよね。対して、現場を実際に見たときに「そんな微々たる努力は意味ないのでは?」と思ってくれてもいいと思っていますし、今まで常識だと思っていたことから離れた自由な発想をしてほしい。そしてそれが許される環境を作ることは大事だと思っています。

ですから、作業として「何をやるか」はある程度こちらから伝えながらも、「何を考えるか」は自由にできるような授業にしていきたい、というのがスタンスです。しかしバランスが難しい。これは今後の私の課題です。

ーー自由な発想をしてほしい反面、そうすると最終成果物へのフィードバックが難しいとも感じます。その点はどう考えられますか?

そうですね。生徒たちから様々な意見が出ますが、解決策が出なくてもOKだよという形にしたいとは思っています。そもそも、簡単に解決策が出るなら、それは社会課題になっていないはずなので、彼らの試行錯誤が見えるものであればOKかなと思っています。

それと、こういうことを言うと「〇〇高校だからできるんだよ」と他校の先生から言われることもあります(笑)どうやら、自由にやらせることは難しいと思われているようなのですが、私はそんなことないと思います。
良い題材があれば、どんな生徒でも必ず試行錯誤したくなります。良い題材さえ用意できれば、それ以外を丁寧にお膳立てする必要はなく、あとは生徒に任せてみる勇気だけがあれば大丈夫です。”デザインしすぎない自由な授業”はどの学校でもできると思います。

【まとめ】社会課題を教科学習に導入する際に大切なこと

「試行錯誤しながら授業をしている」と話すH先生。そんな先生のお話は、単に成績を伸ばすことを超えて生徒たちに”生きる力”をつけてもらいたいという熱意に溢れていました。

問いを探してもらうために生徒に提示するテーマは、社会課題以外にも多くあります。数ある選択肢の中でも社会課題をテーマにしたいと考えるH先生の思いと授業の工夫には、社会課題のスタディツアーを専門に扱う私たちにも多くの学びがありました。

まとめ
(1)社会課題は、問いを見つけ解決する過程を学ぶための良い題材
(2)社会課題の解決など、正解がない課題に取り組む際はできるだけ生徒自身に思考してもらうために誘導しすぎないことを意識する
(3)誘導し過ぎない授業のためには「何をやるか」を伝え、「何を考えるか」は生徒に任せる

🚩メルマガでお伝えします!探究学習のいま

リディラバ教育旅行チームでは、探究学習に取り組む先生方が明日から実践できる記事や、教育に関するセミナー情報をメルマガで発信していきます📣
ぜひご活用ください。ご登録はこちらから👇