社会課題を探究する。「難しいけどやってみたい!」を実現した裏側とは?<導入インタビュー編集後記>
この記事は、情報の授業で社会課題の探究を行うH先生インタビューの編集後記です。このスタディツアーを担当したリディラバのスタッフ・菅野が、設計の裏側を語ります。
👇👇H先生のインタビュー記事はこちらからお読みください👇👇
前編: 情報の授業で社会課題の探究?新たな取り組みを進める先生に学ぶ!
後編: 情報の授業でなぜ社会課題を扱うのか!?教科学習で養う”生きる力”
担当者:菅野真人(株式会社Ridilover 教育旅行チーム サブリーダー)
広告業界での勤務を経て、2021年8月より株式会社Ridilover入社。中高生向けスタディツアーの学校・旅行代理店向け営業やツアー実施までの現場団体との調整を担当。
今回はH先生とともに事前の設計から、スタディツアー当日のメインファシリテーターを担当。
社会課題の現場の余白は、生徒にとってポジティブなものになると気づいた
日頃修学旅行や総合的な探究の時間の一環としてスタディツアーを実施することがほとんどであり、H先生から情報の授業で実施したいと相談をいただいた時は、非常に驚きました。
しかしH先生から授業の構想を詳しく伺うと、とても納得感がありました。
自分の学生時代を思い返して、苦手な教科ほど覚えた知識が将来何の役に立つのか疑問に感じ、学ぶモチベーションが生まれない悪循環に陥っていました。さらに今のネット環境ではスマホでググりさえすれば何かしらの答えがそこに載っている状態です。おそらく昔の自分が今の中高生だったら、既にネット上に正解があふれてる状態で自分が役に立てることなんてないんじゃないか、と斜に構えた生徒になっていたのではないかと思います。
一方、リディラバでスタディツアーの提供を通して、様々な社会課題の現場を知るようになるとまだまだ解決されていない余白のようなものが社会には多く存在していることに気づきます。この余白は、社会にとってはネガティブなものでも、これから自分が学んだ知識やスキルを社会のどのシーンで活かせるのかを考えている生徒にとっては、ポジティブに考えられるものだと感じます。だからこそ、情報の時間で学んだスキルの活用シーンを社会課題にフォーカスして考えさせたいというH先生の授業設計は素晴らしいなと思いました。
「情報で学んだスキルを社会課題解決のために活用するプランを考える」が今回の目標ですが言うは易し行うは難しで、ツアーの細かな調整を必要とします。そのすべてについては紙幅の関係で省きますが、今回は3つのポイントに絞って紹介します。
素直な生徒たちへのツアー先の見せ方は「唯一解にしないこと」
1つ目は、ツアー先の取り組みを唯一解のように見せないことです。
生徒たちは素直なので「訪れた現場が行っている解決策=その社会課題を解決するための唯一解」と解釈してしまう場合があります。
しかし実際社会課題とは複雑に構造が絡み合っているもので、ツアーで行った先で生徒たちに伝えたり見せたりしている面はごく一部です。
唯一解だと思ってしまうと、後のワークショップで自分にできることを考えなくなります。たとえばですが「今日行った団体がもっとがんばればいいと思います!」という結論に至ってしまうことがよくあります。
そうすると、今回の目標でもある「情報で学んだスキルを活かす」場面を自分で考えることができません。
だから、生徒に考えてもらうために「この団体現場すごいでしょ!」という伝え方はしないようにしています。あくまでも「〇〇という課題を解決するひとつの団体として、今日の行き先があります」という言い方をします。
生徒をワクワクさせる「手付かずの領域」との出会い
2つ目は、まだ手付かずとなっている課題にフォーカスし、そこに取り組む大人との出会いを提供したことです。
社会課題の領域は、まだ手付かずの領域が多く残っており、生徒が今学んでいることを将来活用できるチャンスが多くあります。
しかし、一方で難しいのは、手付かずの領域を見せることは生徒の絶望感にも結びついてしまうことです。
「課題が多すぎて自分にできることはない…」と思われてしまうと、スキルを学ぶ意味が半減してしまいます。そのため、「難しそうだけどチャレンジしてみたい!」と思ってもらえるような工夫を行っています。
具体的には、手付かずの課題を解決しようとしている大人に出会うことが非常に大切だと考えています。現場の大人たちの話を聞くと、難しいけれどチャレンジを止めない人が多いです。そこには、難しいんだけど絶望感はなく明るい雰囲気があります。
手付かずとなっている領域にフォーカスし、生徒に絶望感を与えるのではなく自分も関わってみたい!とワクワクさせるような現場体験をしてもらうための肝は、このバランス感覚なのかなと思います。
「じゃあ考えてみよう!」で生徒は動けない
3つ目は、生徒が動き出せるワークショップの設計です。
ツアーで現場を見た後「じゃあ情報で学んだスキルを活かして、課題を解決するためのアウトプットを作りましょう!」と伝えてもなかなか作れません。
「社会課題」というインプットと「情報で学んだスキルの活用」というアウトプットの間に非常に距離があるので、生徒にとって難しいんです。
だから、こちらから適切なフレームワークを提供し、本当に社会にとって有益なアウトプットが作れるよう意識しました。
まず、情報で学んだスキルを使って社会課題を解決しよう!ということを最初に伝えます。H先生がおっしゃっていたように、意義付けを先にしておくことで、生徒たちの問題の見方が変わります。
そして、現場を訪れた後のワークショップはこのように3つの問いを順を追って生徒に投げかける形で進めました。
1.そもそも何が実現できればあなたは嬉しいのか?
何のためにあなたは成果物を作るのか?
2.誰(=ターゲット)にどんな情報を伝えればその理想が達成できるのか?
3.その情報を伝えるために、学んだスキルを使ってあなたに作れるものは何か?
最初に1の「何のためにあなたは成果物を作るのか?」という問いで、インプットとアウトプットの距離を生徒に考えてもらいました。遠いと感じてもらったところで次に「距離を縮めるために次にこれを考えるよ!」と2の問いに移ります。
また、この1〜3を示すだけでは「やることいっぱいある…」と生徒を圧倒させてしまうので、時間は細かく区切りながら伝えます。すると、例えば「今の5分間は質は問わず数だけ出せばいい」と生徒が認識し、スムーズに進みます。
大目的である「情報で学んだスキルを社会課題解決のために活用するプランを考える」ために必要な要素を細かく分解し、時間配分も考えながら順を追って生徒に投げかけてワークショップを進めることで、限られた時間で本当に社会にとって有益なアウトプットを作れるよう声かけをしました。
さいごに
この編集後記では、H先生の授業設計に対して私がどのようにスタディツアーを調整したのか?裏側を解説しました。
どれも知っているからといってすぐに実践できるものではなく、一筋縄にいきませんが、探究授業に取り組む際にも意識できるポイントかと思います。ぜひ参考にしてみてください!
【ポイント】
1.ツアーの行き先が唯一解と思わせない、余白を見せる現場体験の設計
2.手付かずの領域を示し、前向きに取り組む大人と出会わせる
3.インプットとアウトプットの距離を縮めるワークショップ
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