「仕事は最高に楽しい」と子どもに胸を張るためにも。ベンチャー執行役員が社会実装の最前線へ身を投じた理由。

社会の無関心の打破という理念のもと、「社会課題を、みんなのものに。」をスローガンに掲げ、多角的な事業を展開する株式会社Ridilover(リディラバ)。今回は事業開発チームにてサブリーダーとして活躍中の今村景子さんにお話をうかがいました。前職のソーシャルベンチャーでは執行役員まで登り詰めながらも3年前、さらなる社会課題の本質を求めてリディラバの門を叩いた今村さん。官民共創の最前線で磨きあげられた仕事哲学と、家庭との調和を保つためのバランス感覚に迫ります。
原体験としての「違和感」を、社会を動かすロジックへ変えるまで

――キャリアの根幹には、子ども時代の環境が大きく影響しているとお聞きしました。
実家は事業を多角的に手がけおり、家の中は常にビジネスやそれに伴う大人の事情の話が飛び交う環境で、事業を遂行することに付随する様々な考えや葛藤を目の当たりにしてきました。学校生活はというと、市内の中でも進学校に通っていましたが、同年代特有のルールのようなものやコミュニケーションのスタイルに馴染めず、周囲から浮いてしまう時期もありました。次第に保健室が居場所になっていき、そこで出会ったのは、とても優秀だけれど多様な背景を抱えるおもしろい友人たちでした。
――そこでの出会いが、いまの視点に繋がっているのですね。
マイノリティ性をもっていたり、特定の分野に突出した才能がある子。バラバラだけれどなんとなくそこにいることをお互い認め、大変にぎやかな空間は、教室で感じる「同じでなければならない」という閉塞感とは無縁で、居心地が良かったんです。なぜ、これほど魅力的な人たちが、社会の仕組みの中では生きづらさを感じてしまうのか その素朴な疑問が、私の探求心の出発点となりました。進路について、高校の先生に心理学を学びたいと相談しましたが「あなたは他者の内面をケアするタイプではなく、外側の社会システムを変える方が向いている」と断言され、社会学の道を進むことに決めました。
――大学、そして大学院では具体的にどのような研究を深められたのですか?
高校の先生のアドバイスに従って大学、同大学院で社会学を専攻しました。最初に教わったのは「災害社会学」の視点です。自分自身が経験したことのない当事者の声、たとえば被災者の方々の思いやいかに偏りなく同じ目線でヒアリングするか、信頼関係を築いて引き出すか。その手法を教わりました。この時に培った「表面的な発言だけでなく、その背後にある文脈を深く理解する力」は、いまの事業開発の仕事にも直結しています。最終的には、多様な属性を持つ人々が社会的に置かれている状況を解明すべく、マイノリティに関する社会構造についての研究をしました。

――そのまま研究者の道ではなく、ビジネスの現場を選んだ理由は?
当時は社会課題解決といえば非営利セクターがメインな時代でした。もちろんその選択肢もあったのですが、私はどうしても、社会課題を「持続可能な経済活動」の中に組み込んで解決したい、そうでなければ真の意味でシステムは変わらないのではないかと考えていました。幼少期にビジネスのさまざまな側面を見てきたからこそ、営利と非営利の壁を超え、社会課題を解決していくアプローチに可能性を感じたのです。当時はそんな考えを持つ人は周りにはおらず悩ましい日々をおくっていましたが、その確信が私を最初のキャリアへと導きました。
――学生時代から、かなり一貫した問題意識を持たれていたのですね。
一貫していたというより、自分の肌感覚に合う場所を探し続けていた結果かもしれません。大学院修了後、教育関係のセミナー・コンサル・出版を行う小さな事業所を経て、当時はまだ珍しかった「ソーシャルビジネス」を標榜するベンチャー企業に出会います。そこでの10年間が、私のビジネスパーソンとしての骨格をつくることになりました。
ベンチャーの執行役員がリディラバへの転身を決めた一筋の違和感

――前職では10年にわたり、第一線で活躍されました。どのようなプロジェクトに携わっていたのでしょうか。
2011年に発足した、広告代理店をルーツに持つソーシャルベンチャーに2014年に今でいう第二新卒のような状態で入社しました。当時はまだ「熱中症」という言葉が一般化しておらず「熱射病」と呼ばれていた時代です。当時の環境省や厚労省には予算がない中で、前職の代表は大手飲料メーカーなどの民間企業からPR費用を募り、官民共創の形で啓発プロジェクトを立ち上げました。企業の商品の販促活動と、熱中症予防という社会課題解決を掛け合わせる座組みです。
――いわゆる「ソーシャルグッドな広告」の先駆けですね。
そうです。省庁のロゴを背負い、有識者会議を自前で運営し、ナショナルクライアントを巻き込んで全国的なムーブメントをつくる。そのダイナミズムは非常に刺激的でした。最後の方は、自分自身が省庁案件の責任者として、オリンピックパラリンピック関連の施策を担当するようになりました。最終的には執行役員の肩書をいただき、本当にいろんなことを教わりました。今でも感謝はつきません。
――順風満帆なキャリアに見えますが、なぜ転職を決意されたのですか。
一つは、自身の興味の対象とビジネスモデルとのズレです。前職で扱っていたのは熱中症予防や地域活性化といった、いわゆる「大衆に受け入れられやすい社会課題」でした。しかし私が本当に向き合いたかったのは、かつて非営利セクターでしかアプローチができないとされる課題です。民間企業のPRと紐づける以上、どうしてもターゲットの広さが求められ、本当に困っている一部の人々の課題や広告に結びつかない課題には解決策を提示しづらいという限界を感じていました。

――それほど積み上げたキャリアをリセットすることに、迷いはありませんでしたか。
迷いもありましたが、危機感の方が強かったです。コロナ禍でイベント関連の予算が縮小し、事業環境が激変する中で、経営判断も間近に見てきました。その過程で「自分が本当にやりたいことは何か」「社会課題の解決とはどういうことか」を改めて自問自答したんです。転職に際しては、いくつかのソーシャルビジネス系企業を検討しましたが、リディラバだけは違う毛色をしていました。
――リディラバへの入社は何が決め手となったのでしょうか。
面接を通して本質的に社会課題を解決するとは何かを考え抜いている会社だと感じたことです。加えて候補者を理解しようとする熱量にも惹かれました。面接では私の人生の原体験までを汲み取った上で、私の考えを聞いてくれ、組織のカルチャーと合致するかを見極める姿勢を感じました。肩書きなど書面に記載されていることだけではなく、思想やスタンスをみる組織。そこに強い安心感と魅力を覚えたのです。 大手コンサルなど複数への内定もいただいていたのでそちらと比較検討すると、より個人の個性を大切にする会社だなと感じました。
「形のないソリューション」を省庁へ。官民を繋ぐ事業開発の真髄

――リディラバでの現在の具体的な仕事内容について詳しく教えてください。
事業開発チームのサブリーダーとして、主に省庁関係のプロジェクトを推進しています。リディラバの特に事業開発チームには決まったプロダクトがありません。私の主な役割は各省庁の担当者の皆さんと対話し、皆さんが抱える課題感を具体的な事業で解決していくことです。例えば文部科学省とは発達障害のある生徒の調査を、環境省とは地域循環共生圏の広報の戦略立案を、農林水産省とは官民共創のプラットフォーム運営を、内閣府とはスタートアップと自治体の連携を行うなど、分野は非常に多岐にわたります。
――営業というよりも政策コンサルティングに近いのでしょうか。
そうですね。単なるクライアントワークでも単なるアドバイザーでもありません。省庁の予算形成や通常2年ごとの人事異動のサイクルを熟知した上で、皆さんがどんな社会実装をしたいのか、そのために必要なエビデンスや座組みは何かを、会話から拾いあげていきます。リディラバが持つ現場のネットワークと、省庁が持つ制度設計の力を掛け合わせる。そのつなぎのような役割が私の仕事です。
――省庁とのやり取りで、今村さんが特に大切にしていることは?
課題解決に向けて同じ志をもったパートナーであり続けるというスタンスです。省庁の方々はどうしても、実際の課題の現場には触れにくい立場にあります。一方で私たちは現場の当事者の声を持っています。「いま現場ではこういうことが起きています。なぜそうなっているのかの仮説はこのようにたてています」と情報を渡しながら解決につながる事業を考えていく。クライアントワークを超えた一緒に問いを解くパートナーであることを強く意識しています。

――同時に複数の大型案件を回すのは、相当なスキルが求められそうです。
現在は常に3〜4本のプロジェクトを並行してマネジメントしています。発達障害のある学生の支援調査、社会起業家育成、広報戦略などそれぞれ脳の違う部分を同時に使うような日々でした。リディラバのプロジェクトはマクロな政策の動きとミクロな個人の困りごとを常に行き来します。「この事業を通じてが社会が、現場が少しでも変化するだろうか」と常に自分自身の原点に照らし合わせて確認できる。それが多忙であっても枯渇しないエネルギー源になっています。
――リディラバの事業開発チームには、どのようなメンバーが集まっているのですか?
ひと言で表すなら「個性あふれるストイックな集団」ですね。学歴や職歴が華々しいメンバーも多いですが、みんなを突き動かしているのは単純な上昇志向ではなく、社会課題に対する探求心と社会を変えたいという思いです。さまざまな出自、専門性の高いメンバーたちと議論を交わす時間は、この上なく贅沢な学びの場です。
――前職と現在で、自身の「社会課題への向き合い方」に変化はありましたか。
前職では「どう一般層を巻き込むか」という普及啓発的な視点が強かったですが、いまは「どう仕組みを変えるか」という構造改革の視点に完全にシフトしました。たとえば地域づくりの案件でも、単にPRイベントを打つのではなく、その地域の経済循環や福祉のネットワークがどう絡み合っているのかを解きほぐしていく。一見遠回りに見えますが、その複雑な糸を一本ずつ解いていく作業にこそ本質的な面白さがあるんじゃないかと常々思っています。
「内省」という名の成長痛と、仕事を楽しむ母の背中

――リディラバという組織で働く中で、チャレンジングだと感じる瞬間は?
いつも徹底的に考え続け自分自身を内省をし続ける必要があることです。リディラバで扱う課題は複雑な構造になっているものが多いため、単純な思考に留まってしまうと本質的な課題解決にならず逆に課題解決から遠のいてしまうため、常に思考を止められません。また自分自身の思考の癖も論理的に分析しなければ、次の一手へ繋げることができません。私も自分の発言が相手に伝わりきらなかったり、立てた仮説のロジックが甘かったりした日は、夜な夜な一人で反省して「もう明日からここにはいられない」と思うほど落ち込むこともあります(笑)。でも、その思考と内省という名の成長痛を乗り越えることでしか、社会を変える力は身につかない。その厳しさこそが、私たちがプロフェッショナルである証だと思っています。
――今村さんは2児の母でもありますが、ハードな仕事と家庭をどのように両立させているのですか。
夫がフリーランスのデザイナーで自宅で仕事をしていることも大きいですが、家事や育児の分担にはかなり柔軟性を持たせています。送り迎えや掃除、洗濯は夫。私は料理と、子どもたちの学習などをメインに担当しています。リモートワークのおかげで17時頃には一度仕事を切り上げ、夕食、お風呂、読み聞かせといった「親としての時間」を密度濃く過ごすことができています。その後、繁忙期に必要があれば朝、子どもが起きる前や自分が寝る前に仕事を再開できるため、オンとオフを自分自身の裁量で切り替えられる環境には感謝しかないですね。
――お子様たちは、お母さんの仕事をどのように見ているのでしょう。
娘が「ママ、ずっとパソコンに向かってお話しして笑ってるね。何のお仕事なの?」と聞いてきたことがありました。私は「社会をより良く変えるお仕事だよ。すごく楽しいよ」と胸を張って伝えています。生まれ育った家では仕事が楽しいものと感じられることが少なかったこともあり、私は子どもたちに仕事は自分で掴み取り、楽しむものだという姿を見せたいんです。家庭のために仕事を犠牲にするのではなく、仕事を謳歌する姿を見せることが子どもたちへの最高の教育であり、かけがえのないギフトになると信じています。

――リディラバには、今後どのような人に仲間になってほしいですか?
「いいことがしたい」という思いだけでなく、その裏側にある社会の複雑さを楽しめる人です。思考を止めず、問いを立て続けられる人。リディラバは学歴や属性だけで人を判断しません。実際、チームには多様なバックグラウンドや課題意識を持ったメンバーが集まっており、実戦で培った経験と課題に対する執着心があればいくらでも活躍の場はあります。特にライフステージの変化に悩みながらも社会にインパクトを与えたいと考えている女性には、ぜひ門を叩いてほしいです。
――今村さんご自身が、リディラバを通じて実現したい未来を教えてください。
社会課題の解決を加速させる担い手を、圧倒的に増やしていきたいです。一人の天才が世界を変えるのではなく、仕組みを理解し、現場を動かせる実務家が100人、1000人と増えていくこと。リディラバという組織がそのインキュベーターとなりたい。そのためには、私自身がまず担い手のトップランナーとして、走り続ける姿を見せていかなければなりません。
――最後に、社会課題解決を仕事にしたいと考えている方へメッセージを。
社会課題解決は、美談ではありません。泥臭い調整と、終わりのない思考と内省の連続です。でも、これほどまでに知的好奇心を刺激され、自分の介在価値を実感できる仕事は他にありません。決して大げさでなく、やりがいしかないです。世界は広く、課題は無限にありますが、それを面白いと思える仲間がいれば、どんな高い壁も乗り越えていけます。人生を謳歌しながら社会の仕組みを一緒に書き換えていきましょう。

【profile】
今村景子 事業開発チーム サブリーダー
1987年、石川県生まれ。専修大学大学院文学研究科社会学専攻修了。ソーシャルビジネス領域の広告代理業ベンチャーに10年間在籍。執行役員を務める。2023年4月、株式会社Ridilover入社。事業開発チームにてサブリーダーとして省庁・自治体事業を含む各案件の組成・推進を担当する。