すべての子どもたちに『没頭し、遊びぬく』体験を ~子どもの体験格差解消プロジェクト×花まるサマースクール2025~

”「回数を重ねることで『僕は大丈夫』って思えるようになってきています。心が強くなったと感じています」”
小学校3年生の男の子を持つひとり親家庭の親御さんへのインタビューで聞かれた言葉です。
川遊びやサムライ合戦に全力で挑む中でたくましくなっていく子どもたちー。子どもたちの心が強くなっていくことで、親御さん自身にも良い影響があったそうです。
今回はリディラバが運営事務局を務める「子どもの体験格差解消プロジェクト」にて、2025年8月21日・22日に花まる学習会主催で開催した「花まるサマースクール」に、ひとり親家庭の子どもたち37名を招待した取組の実施レポートをお届けします。
目次
クラウドファンディングへのご支援、ありがとうございました!
今回の取組は、当プロジェクトの発起人の1人である山野智久が代表を務める、アソビュー株式会社のプラットフォーム「アソビュー!」を活用し2025年7月24日から8月20日まで実施した、クラウドファンディングにより実現しました。目標金額150万円に対し、172名の皆様から総額87万6,600円のご支援をいただきました。差額は、子どもの体験格差解消プロジェクトが補填し、すべての子どもたちを招待することができました。ご支援いただいた皆様、本当にありがとうございました。
「体験格差」という社会課題

当プロジェクトでは、活動の1つとして子ども支援NPOや体験サプライヤーなどへのインタビュー、学術研究などを通じて、「子どもと体験」に関する調査・分析に取り組んでいます。
近年の研究から、子どもの頃の体験が意欲や主体性など、社会を生き抜くための様々な能力を育むことが明らかになってきました。最近では、大学全体の約85%が体験を評価する総合型選抜入試を導入したり、企業の採用面接でもコミュニケーション能力が最も重視されたりなど、社会的要請も高まっています。
一方で、地域の衰退や教員の多忙化、核家族化や共働きの増加により、以前は誰もが身近で低コストに得ることができた体験の機会が大きく減少しました。その結果、家庭環境や子どもたち自身の置かれている状況によって体験機会の享受が二極化する「体験格差」が生まれていることがわかってきました。
特に経済的困窮やひとり親世帯など、困難を抱える子どもたちは体験機会にアクセスしにくい状況があります。さらに、体験機会が不足することで子どもたちの意欲や自己肯定感の格差につながり、自分に対する諦めの気持ちが強くなっていくことで、無意識に将来の可能性を狭めてしまう危険性があることが見えてきました。
こういった状況に対し、当プロジェクトでは子ども支援NPOや体験サプライヤーと連携し、困難な状況にある子どもたちが置かれた状況に応じて意欲や自己実現に向けて必要な経験を得られるような体験機会の提供を行っています。
子どもたちの生きる力を育む「花まるサマースクール」
花まるサマースクールは、当プロジェクトの発起人1人である高濱正伸が代表を務める「花まる学習会」が提供する、子どもたちの”生きる力”を育む野外体験プログラムです。
子どもたちの脳は、楽しんで没頭しているときに最も活性化するそうです。今回の花まるサマースクールでは、「子どもたち自身が何をするか考え創造する、遊びの”素材”だけを提供する川遊び」や、「初めての仲間と協力し、子どもも大人も全力で臨むサムライ合戦」などを通じて、親元を離れて過ごす経験、本気で向き合ってくれる大人との出会い、初めての仲間と一緒に何かを成し遂げることに挑戦する機会を提供しました。
今回の参加者募集は、東京都内で地域の子どもを見守り、子ども食堂や無料学習支援などを展開する子ども支援NPOと連携しました。フードパントリーに登録しているひとり親家庭に募集案内を行い、45名枠の募集枠は満員となり、最終的に37名が参加しました。
大自然の中で没頭し遊び抜く「花まるサマースクール」実施レポート
1日目:ゼロからイチを生み出す川遊び

8月21日、上野駅に集合した子どもたちは、バスで新潟県湯沢町へ。到着後、まずは「7つの約束」を共有しました。「挨拶とお礼を大事にする」「話は1回で聞く」など、1泊2日を安全に楽しく過ごすための基準を、子どもたち自身が意識できるよう伝えていきます。

お昼ご飯を食べたあとは川遊び。用意されたのは川という遊びの”素材”だけ。何をするかは子どもたち次第です。水かけっこ、綺麗な石探し、石でダムづくり、カジカ探し。

最初は「入りたくない」と言っていた低学年の子も、リーダーや仲間が楽しむ姿を見て、次第に輪の中へ。遊びの中で自然と仲良くなっていく子どもたちの姿がありました。
真剣に石を積み上げる子、温泉づくりに夢中になる子。ゼロからイチを生み出し、一人ではできないことを協力して成し遂げる経験が、遊びの中に詰まっていました。水かけの輪が広がり、出たり入ったりしながら、子どもたちは自分なりの楽しみ方を見つけていきました。

思いっきり遊んだ後の夕食。ごはんと味噌汁がおかわり自由。8杯、10杯と食べる子もいたそうです。苦手なものには「1口食べてみよう」と声をかけ、食べられたら皆で「おめでとうコール」で褒め合いました。


夜は手持ち花火とキャンプファイヤー。ダンスで盛り上がり、一日の疲れを癒して就寝しました。
2日目:初めての仲間と挑むサムライ合戦

2日目は、花まる学習会オリジナルの「サムライ合戦」。チームに分かれ、自軍の大将を守りながら相手チームの大将の紙風船を割りにいくゲームです。
大将は自薦・他薦で決定。「1回も割られていないので勝ちます」「全体を見て、指示を出して皆が勝てるようにします」など候補者がそれぞれの強みを宣言し、スタッフは介入せずに子どもたちだけで大将を選出します。選ばれなかった子も「勇気ある子」として賞賛され、気持ちを切り替えて勝利に向けて挑んでいました。

「もともと皆の中でも年齢が上なこともあり、皆のお兄ちゃんという存在で、控えめながらもリーダーシップを見せていた子がいました。ですが、サムライ合戦に挑む中で、『まとめる必要性』を感じたのか、一歩引きながらサポートしていくのではなく、前線で引っ張っていくようになって、声を出せるようになりました。終わった後、宿に帰ってからは周りの子たちに積極的に声をかけられるようになっていたのが印象的でした。」ー花まる学習会のスタッフ談
花まるサマースクールでは、意図的に子どもたちに役割づくりをしているそうですが、「頼りにされる」というのが、子どもたちへのきっかけになっているのかもしれません。

サムライ合戦のあとには昼食を取り、いよいよ帰りの時間に。子どもたちからも徐々に「まだいたい!」という声が聞かれました。
帰りのバスでの表彰式では、班のリーダーから一人ひとりにメッセージを。「皆が成長したね」「また、次に会うのを楽しみにしている」と締めくくりました。
参加した親御さんへのインタビュー
「親が提供してあげられない体験に感謝」── 1年生の男の子をもつお母さん

未婚で出産したので、苦労するのはわかっていましたし、自己責任(自分でそうしたのでしょ)と言われるので、これまで色んな支援の案内をもらっていましたが、頼ってよいのかと葛藤していました。ですが、こんな経験をさせてあげられることはないので、ぜひ参加させたいと思い、すぐに申し込みました。
車も持っていない、運転技術もない。親子2人で出かけても、多くの人と一緒に何かできるような体験はできません。人と繋がることができるこのような自然体験をさせていただけることに本当に感謝しています。
「自然の中で遊ばせてくれるというのは、なかなか親が提供してあげられないから本当に感謝しかないです。いつもどこかのタイミングでお礼を伝えたいと思っていました。企画を毎年していただいて感謝していると伝えてほしいです。」
「僕は大丈夫」── 3年生の男の子をもつお母さん

親元を離れて泊まる機会がないので、よい機会だと思い参加を決めました。最初の参加時は本人は参加内容など理解できていなくさみしがることはなかったのですが、母親である私は不安がありさみしかったです。せっかくの1人の時間なのに子どものことばかり考えてしまいました。
父親がいないこともあり、大人の男性と接することがないので、一緒に遊んだことが嬉しかったみたいです。大人が一緒になって本気で遊んでくれることは、普段生活していて経験ができないからなおさら嬉しかったのだと思います。いつも参加数日前に「1人で行くのか〜」と心配することもあるのですが、回数を重ねることで「僕は大丈夫」って思えるようになってきています。心が強くなったと感じています。
1泊2日の体験が、子どもたちにもたらしたもの
もう1つ、花まる学習会のスタッフから子どもたちの印象的だったエピソードをお伺いしました。
「その子は、最初の川遊びの時、ずっと1人で遊んでいたんです。会話をするときも自分の話や主張が多いような子でした。でも気づいたら、徐々に他の子たちとの水かけに混ざっていったんです。
そして2日目のサムライ合戦では、中学生で周りの子よりも体格が大きかったこともあり、この子が大将に選ばれました。
すると、『皆で行くぞー!』とチーム全体を鼓舞しながら先陣を切っていくような動きを見せたんです。また、最後の大人対子どもの対決では、多くの子どもたちが「絶対勝てないよ」という空気の中で、彼は1人、みんなを鼓舞してチームの士気を高めてくれていました。
1泊2日を過ごす中で、自分を大きく見せるだけでなく、他のコミュニケーション方法がある、みんなと一緒にすることが楽しいと彼自身が気づいたんだと思います。」
これまで多くの子どもたちと向き合ってきた花まる学習会のスタッフの経験からも、1泊2日の中でここまで大きな変化があるケースは特別だったそうです。
実は当プロジェクトのこれまでの様々な調査で、困難な状況にある子どもたちは、自分と他者とのかかわりを学ぶ経験が不足しているケースがあることがわかってきています。
花まるサマースクールに参加した多くの子どもたちにとって、親御さんから離れて初めましての仲間と過ごす経験や、本気で向き合ってくれる大人たちとの出会いを得られたことが、「1人でも大丈夫」という自信の獲得や、集団の中での自分なりの居場所や役割の見出し方の発見に繋がったのではないかと思います。 皆様のご支援のおかげで、子どもたちに、夏休みの1つの思い出に留まらず、将来の可能性を拓いていくきっかけを届けることができました。
皆様のご支援のおかげで、子どもたちに、夏休みの1つの思い出に留まらず、将来の可能性を拓いていくきっかけを届けることができました。
「子どもにとって必要な体験」を届けられる社会へ

子どもの体験格差解消プロジェクトでは、2023年1月の発足以来、計15回349名の子どもたちに体験機会を提供してきました。
子ども支援NPOをはじめ、様々なプレイヤーが体験機会を届けているにも関わらず、体験の格差が広がり続けてしまっている現状を変えていくには、社会全体で子どもたちを支えていく新たな仕組みづくりが必要です。
だからこそ私たちは、まずは目の前で体験機会が不足しがちな子どもたちに、信頼できる大人との出会いや新しい価値観との出会いなどに繋がる体験を届けていきながら、その活動を大きくしていくことで、より沢山の方々へ体験格差を知っていただき、解消に向けた取組をご一緒していくことを目指しています。
今回の花まるサマースクールは、発起人である高濱正伸、山野智久の協力、そして何より172名の支援者の皆様のご寄付があったからこそ実現できました。
経済状況や家庭環境によらず、すべての子どもたちが「自分らしく生きていくために必要な力」を育める社会の実現に向けて、私たちは活動を続けていきます。
継続的なご支援により、より多くの子どもたちに「人生を変えるきっかけ」となる体験機会を届けることができます。月額1,000円からご支援が可能です。いただいた寄付金は、本プロジェクトの推進に関してのみ活用させていただきます。ぜひ引き続き、皆様のあたたかいご協力をお願いいたします。